くるくる回る月の満ち欠けのように

 アナタに向かう心も変わる。

 

 くるくる回る落ちる花弁

 くるくるくるくる

 回る回る

 輪廻のように

 

 変わる事は不実ですか?

 

 

 少年期 






 いつもはビルに切り取られた空も、ここから眺めると視界をさえぎる物がない。

 青く横たわるその空間を切り裂くように、上空を飛行機が横ぎってゆく。

 ぼんやりとそれを見上げた久美子の瞳が少し眇められて。

 見慣れた顔が違う女のそれへと変わるのを、一人の少年が黙って見ていた。

 

 昼休み。

 たまたま居合わせた担任教師と二人きり。

 自分的には結構気に入ってる教師との会話に少し弾んだ声が。

 さえぎるように小さく重なった音に止められる。

 

 目の前には黙って空を見あげる女の白い喉。

 細く白いそれは、普段の担任の影を潜ませた。


 視線と一緒に、心までどこかへ飛んでいってしまった・・・。

 空を見あげる見知らぬ女。




 武田はなんだかそれが悲しくて、小さい背を伸ばして、顔に手をかざした。

 「・・・たけ・・・だ?」

 

 視界を覆われた久美子が問うように呟いて視線を下げた時には、もう普段の表情で・・・

 武田もそれにあわせて屈託なく笑う。


 「目隠し」

 エヘヘ、と添えるように笑う。

 

 他の生徒がやったらトゲがある仕草だったりイタズラでも

 何故かこの武田啓太という生徒は許容される。

 もって生まれた愛嬌のよさとか、そういったものだろうか?

 イタズラに目隠しされた久美子も思わず微笑んだ。

 

 今まであまり感じた事がないが、こう・・・小動物を可愛がる人間の気持ちがわかってしまった。

 あのTVのCM、あながち嘘じゃないかも・・・と、金融会社のCMを思い出す。

 大きな犬っぽい目で見られると、妙に保護欲が掻き立てられるのだ。

 

 思い出しついでに、そういえば昔、

 一人暮らしの女が男の子とペットと飼い主として生活するドラマ・・・なかったっけ?

 などという事も思い浮かんだ。



 (こいつならそういうのアリかも・・・)

 

 考えたら急におかしくなって、久美子はクスクスと笑い出した

 

 「武田、道端で変な女の人に声をかけられてもついてっちゃダメだぞ」

 「ヤンクミ・・・俺小学生じゃないんだから・・・」

 

 ぷくりと拗ねたように頬を膨らませるのすら子犬のように見えて、また久美子が笑う。

 拗ねて見せた武山もつられて笑った。

 先ほど見た見知らぬ女の影は掻き消えて、いまはいつもの「やんくみ」だった。

 

 俺らの担任。

 そお・・・”俺らの”

 

 担任の目が自分を見ている事に気をよくしたタケは空に向かって大きくのびをした。

 青い上空に、もう邪魔をする飛行機はない。



 「やんくみ」

 
 空を見上げたまま呼ぶと、近い距離で「なんだ?」と声がかかる。

 

 「なんでもない。呼んだだけ〜♪」


 力の篭らない軽いこぶしが後頭部をポカリと叩く。

 

 「武田、今日はいたずらっ子か?」

 「可愛くっていいっしょ?」

 「はいはい、武田君は可愛いね〜」

 

 今度はよしよしと子供にするようにのびあがって頭を撫でられた。

 優しい感触が気持ちいいのに、なんでか少し不快。



 自分から言ったのに、子ども扱いされて、ちょっとムッカリするのは、男としてもプライドからだろうか?

 それとも、言ったのがこの担任だからだろうか?

 

 解明されそうにない疑問に、武田の手が伸び、下ろそうと離れた担任の手首を掴んだ。

 びっくりするほど細いそれを、グイとひきよせると、

 驚いたように上がる声にも構わず一度だけぎゅうと抱きしめて―――すぐに離れる。

 

 ぽかりと口を開けた彼女が我に返って真っ赤になり、

 意味不明に叫ぶのを確認すると逃げだすために走り出した。


 「これもイタズラ〜!」


 可愛いとよく言われる容姿も

 こんな時は少しだけ役に立つ。

 笑いながら駆け出した背にかけられた声は、怒った内容のわりに優しく響いてほっとする。

 

 男だと・・・思ってないからなんだろうけど・・・・

 もちろんそれは悔しい


 駆け下りる階段で、つまずきそうになって手すりに捕まった。

 冷たい手すりの触感と、腕の中に小さく残る柔らかな感触。

 

 子供と大人の中間。

 都合よく変わってしまう不実な自分。

 

 それでも

 そんな自分が

 キライじゃないな、と


 武田は思った。


 

 END

 

 

 有希っちへ☆
 か〜な〜り、タケを飼いたい雪乃です!(←やばっ)

 執事、雪乃っちへ☆
 武!!!!くぅぅううう、可愛い〜〜そして切ないけど優しいネ!大好物です!!
 てか小動物・・・・ぷぷぷ、激しく共感(笑)
 もうもう、ホントに、相変らず素晴らしいお仕事されるネェ・・マジ感動しました><v